
亡くなった後の手続きは?
施設で入居者が亡くなった場合、あらかじめ規定に定められた手続きに基づいて、施設から退去します。相続などの点についても、明確にしておきましょう。
死亡後の手続きについて施設の規定を確認する
住み替えた高齢者施設を、“終の棲家”とするのであれば、死亡後の準備や手続きについても、あらかじめ考えておくことが必要です。死亡も含む施設退去の手続きについては、それぞれの施設が設けている規定に則って行われます。契約の解除、居室の原状回復にかかる費用の有無、退去から現状回復までの期間などについて、あらかじめ細かく確認しておくことが重要です。死亡後の遺体や家財などの引き取りに関しては、施設の管理規定により、契約書に記載されている入居者の身元引受人に引き取る役割があるよう明記されているのが一般的です。
所有権のある住宅では、居室の相続も考えておく
死亡後の手続きに関連して重要なのが、相続について明確にしておくことです。死亡した人が住んでいる施設が介護保険施設であれば、住まいは相続の対象にはなりません。また、多くの有料老人ホームが採用している「利用権方式」の施設も、所有権はありませんので、住まいが相続の対象になることはありません。ただし、入居者の死亡が入居一時金の償却期間前の場合は、未償却分の返還金があり、これは相続の対象となります。また賃貸物件で敷金の返還がある場合も、同様に相続の対象となります。
一方で、シニア向け分譲マンションには、居室に所有権が発生していますので、本人の死亡後は相続の対象となります。この場合、ローンを使用していて、返済が終わっていなければ、その債務も相続の対象になりますので、注意が必要です。また、相続人は自分が住まなくても、毎月の管理費や修繕積立金等の経費をはじめ、固定資産税も支払わなくてはなりません。
こうしたケースでは、相続が発生してから3カ月以内に、家庭裁判所へ相続放棄を申し出ることで、引き受けたくない債務を回避することができます。また、団体生命信用保険に加入している場合は、ローンの支払い義務者が死亡した場合、保険料で負債をなくすことができます。
身元引受人や相続人との情報共有を
死亡後の手続きについて、また所有権のある住宅等に関する相続についても、あらかじめ身元引受人や相続人となる人(一般的には家族)と、事前によく話し合い、情報共有をしておくことが大切です。
たとえば先に説明した相続放棄をする場合、家庭裁判所への申し出は3カ月以内と期限が定められています。こういった時間的な制約や規定についても細かく情報を共有し、十分に相続人や身元引受人に理解をしておいてもらわなければなりません。このため住み替えの際に、死亡後の手続きや相続に関して、必要な手続きについてわかりやすく文書等にまとめて、双方で共有しておくと良いでしょう。
施設によって異なる相続
●介護保険施設(特養、老健、介護療養型医療施設、介護医療院など)
居室の家財や私物以外、相続するものはない(施設への債務があれば相続)
●賃貸物件(シルバーハウジング、サービス付き高齢者向け住宅など)
一般的に貸借権は相続の対象となるが、相続人が 60 歳未満の場合は入居対象とならず、権限がなくなる。公的住宅の場合は規定で相続はできない
●利用権方式の施設(有料老人ホームなど)
利用権は相続できないので、住まいや居室は相続の対象にはならないが、入居一時金の返還金は対象となる
●分譲物件(シニア向け分譲マンションなど)
居室そのものに所有権が発生しているので、相続の対象となる(債務も相続される)
出典:岡本弘子『高齢者施設の費用・選び方・手続きのすべて』ナツメ社
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