
ケガや骨折をしたときは?
高齢者施設は安全に配慮されていますが、それでも事故やケガのリスクをゼロにはできません。施設の安全対策を、事前にしっかり把握することが重要です。
ケガや病気のリスクはゼロにはできない
高齢者施設は、普通の住まいに比べると不慮の事故によるケガや病気のリスクは低い環境であるといえるでしょう。しかし、高齢者が生活をしていく以上、事故やそれによるケガ、病気のリスクを完全にゼロにすることはできません。このためどんなに設備が充実し、ケアの質が高い施設であっても、ケガや病気が起こる可能性を、あらかじめ理解しておくことが必要です。
安全を担保するための基準やガイドラインがある
高齢者施設では、介護事故などのリスクを減らすために、さまざまな安全対策を講じています。たとえば特別養護老人ホームでは、施設基準において、施設における体制整備により介護事故予防を図ることが義務づけられ、そのための具体的な方針として、「特別養護老人ホームにおける介護事故防止予防ガイドライン」が定められています。また公益社団法人全国有料老人ホーム協会では、有料老人ホームを対象にした「ケアリスクマネジメントハンドブック」を策定し、施設での介護事故予防を進めています。さらに多くの自治体では、サービス付き高齢者向け住宅の危機管理マニュアルを作り、それらに基づいた施設運営をするよう指導しています。
事故やケガへの対応について事前に確認をしておく
施設でのケガや病気といったリスクを避けるためには、まず入居を決定する前の段階で、その施設におけるこれまでの事故やケガなどの発生状況、それに対する施設の対応、事故発生時の対処方法がどのように整備されているか、職員の事故防止に関する教育がどのように行われているのかなどを、しっかりと確認しておくことが重要です。一般的には、施設において事故が発生した場合の対応(医療機関への連絡や搬送、家族への連絡、施設の損害賠償責任保険の加入状況など)は、重要事項説明書に記載されています。
万が一、施設に入居してから施設側が入居者(利用者)に対する「安全配慮義務」に違反したためにケガなどをした場合は、利用者やその家族は、損害賠償請求をすることも可能です。また、職員のミスによって事故が発生した場合も、立証できれば職員本人や施設に対して損害賠償請求をすることができます。
施設に賠償責任が発生する事故の例
❶施設や設備に起因する事故
職員が利用者をベッドから車いすへ移乗させる際、不注意で利用者が転落し、ケガをさせた
❷生産物に起因する事故
ホームが提供した食事が原因で食中毒が発生した
❸受託物の事故
ホームが管理するトランクルームで火災、 盗難、漏水などが発生し、財物に損害が生じた
❹人格権侵害
利用者の個人情報を外部に漏洩し、プライバシーが侵害された
❺純粋経済損害
ケアプランの作成ミスにより本来必要なサービスが受けられず、過大な経済負担が発生した
出典:岡本弘子『高齢者施設の費用・選び方・手続きのすべて』ナツメ社
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