高齢者施設の費用・選び方・手続きのすべて

施設探しから入居までの流れ

最初に行うのは、ライフデザインから。その後、情報収集・条件の絞り込み、資料の確認などを経て、現地見学や体験入居をして入居決定となります。

まずは予算を割り出すこと

 高齢者施設への住み替えに向けて、まずは住み替えに必要な予算を決めておきましょう。現時点での貯蓄や資産、さらにこれから受け取れる収入(年金等)などを洗い出し、住み替えに当てる費用を割り出します。
その際には、「入居時の費用」+「月々の生活費×12×居住想定年数」を試算し、無理のない費用支払いの計画を考えることが大切です。

住み替えたい地域を絞る

 次にどの地域に住み替えたいかを考えます。一般的には今の自宅の近くや家族の住む場所近辺を希望しますが、あまり狭いエリアで探すと予算や条件に合うところが見つからない場合もあるので、交通アクセス等も含めて、どこまで広げられるかも考えながら希望地域を設定します。また、立地環境についても、緑の多い静かな郊外が良いのか、利便の良い駅近の場所に絞るのかなどを考えておきましょう。

心身の状態に合った施設形態を検討する

 予算と希望地域が設定できたら、どのような形態の高齢者施設が、自分あるいは住み替えを考えている親に合っているのかを考えます。ここでは、住み替えをする人の心身の状態を元に整理をすると良いでしょう。
 住み替えをする本人が自立しているのであれば、自立型の有料老人ホームやシニア向け分譲マンション、自立者向けのサービス付き高齢者向け住宅などが住み替えの対象になります。一方で、介護が必要な人であれば、要介護型の有料老人ホームやサービス付き高齢向け住宅などが対象となります。

自立している人向けの住まいの場合

【 住み替えの時期は?】

元気なうちに住み替えを検討


【選べる住まいは?】

<比較的低額で住み替えができる住まい>

  • 一般的ケアハウス
  • 自立者向けサービス付き高齢者向け住宅

<費用が高額になることが多い住まい>

  • シニア向け分譲マンション
  • 有料老人ホーム(住宅型、介護付き)

【 予算は?】

  • 最も低額な住まいで月額費用 5 万円程度のシルバーハウジング(食事・サービスなし)
  • 高額な住まいでは月額費用 100 万円代の有料老人ホームも

※低額と高額の間、中間の費用帯の住まいが非常に少ない

介護が必要な人向けの施設の場合

【 住み替えの時期は?】

介護(要支援~要介護)が必要になってから住み替えを検討


【 選べる施設は?】

<比較的低額で住み替えができる住まいや施設>

  • 介護保険3施設(特養、老健、介護療養型医療施設―介護医療院)
  • 介護型ケアハウス
  • グループホーム
  • 要介護者向けサービス付き高齢者向け住宅

<費用が低額から高額まで選べる住まい>

  • 有料老人ホーム(介護付き・住宅型)

【 予算は?】

  • 最も低額な住まいで月額費用 5 万円程度の特養(食事・サービスあり)
  • 高額な住まいでは月額費用が 100 万円近い有料老人ホームも

※有料老人ホームは、居室やサービス内容などが、ホームごとに費用に見合ったものとして大きく異なる

希望する条件に優先順位をつけて施設を絞り込む

 さらに、住み替えをする本人がどのような生活を送りたいかを具体的に描き、それをかなえるために必要なこと(条件)を洗い出します。その条件に対してさらに優先順位をつけることで、よりその人の希望に合った施設選びができるのです。

一次情報を集め、パンフレットや重要事項説明書を入手する

 住み替えをしたい施設イメージが明確になったら、いよいよ実際に施設の一次情報の収集を始めます。まずはネットで検索して、幅広く情報を集めてみましょう。雑誌や新聞広告などにも普段から目を向けておくことが大切ですし、地域の相談窓口へ行ってみるのも良いでしょう。
 一次情報を集めて検討し、複数の施設を候補としてピックアップしたら、次はそれぞれの施設に資料請求をしてみましょう。施設が発行する資料には、一般的なパンフレットに加え、有料老人ホームなら「重要事項説明書」があります。重要事項説明書は読みにくいかもしれませんが、施設選びには、むしろこちらのほうが重要といえます。

現地見学や体験入居で本人に合うかを判断

 パンフレットや重要事項説明書を確認し、入居を希望する施設をさらに複数絞り込んだら、次は現地見学や体験入居で、実際に自分の目で要望に合うかを判断します。その結果、住み替えをする本人が「これだ!」と感じた施設があれば、入居を決断し、申し込みとなります。ただしその前に、できるだけ住み替えについて家族の同意を得ておきましょう。

入居申し込みから入居判定、そして契約へ

 施設へ入居の申し込みをすると、希望する居室が押さえられます。次に入居を受ける施設側の審査があります。まずは本人の診断情報の提出が必要となり、施設所定の診断書用紙にかかりつけ医などに記載してもらい、施設へ提出します。施設は主治医の判断のもと、感染症の有無等を確認した上で審査を行い、本人との詳細な面談や介護・看護のサマリー等で本人の生活状況等も把握した上で、最終的な入居判定を行います。

施設選びから入居まで

予算を決める:費用に充てられる資産や収入を洗い出し、無理のない費用計画を考える
希望地域を設定する:住み慣れた地域・家族の通いやすい場所
住み替える人に合った施設形態や入居条件を考える:自立しているか? 介護が必要か? 入居条件に合致しているか?
条件を整理する:住み替えをする本人の要望から、求める条件に優先順位をつける
一次情報を集める:インターネットや広告、相談窓口などで、施設の基本的な情報を集める
パンフレット・重要事項説明書を入手して確認する:施設に直接コンタクトを取り、パンフレットや重要事項説明書を入手して、検討する
絞り込んだ施設を見学、さらに体験入居をする:現地見学や体験入居で、実際の暮らしの様子を確認する
施設に入居を申し込む:入居意向を伝え、希望の居室を押さえる
施設が入居判定を行う:診断書と本人面談で受入れの可否を判断する
入居契約:身元引受人を立てて契約書を交わし、入居時費用を支払う
入居:荷物を搬入し、生活を始める

出典:岡本弘子『高齢者施設の費用・選び方・手続きのすべて』ナツメ社​