
見学・体験に行く 1
入居を希望する施設を絞り込んだら、現地見学や体験入居などで、実際に施設のサービスや設備などをチェック。それらを比較検討して入居先を選びましょう。
現地見学や体験入居で施設を絞り込む
高齢者施設への住み替えに向けて情報を集め、いくつか候補の施設を絞り込んだら、現地見学や体験入居をしてみましょう。高齢者施設の多くは、入居検討者に向けて見学対応や体験入居のプランを用意しています。まず複数の施設を見学して候補をさらに絞り込み、元気なうちの入居なら、お試し気分で気軽に体験入居してみましょう。要介護になってからの入居の場合は、入居先を決めてから、最終確認のために体験入居を利用します。
見学や体験入居では、後述する施設のチェックリストなどを用意し、メモをとったり、気になるところは許可を得てデジタルカメラで撮影するなどして記録しておくと、後で比較・検討する際に便利です。
本人に合うかの判断はじっくり検討
見学や体験入居の申し込みをしたら、その時点から、その施設に対するチェックをする心づもりでいましょう。申し込みをする際の施設の受け答えや対応、パンフレットやホームページなどでの情報開示のレベル、施設に関して希望する場所はすべて見せてくれるのか、あるいは一部しか見学させてくれないのかなども、その施設を判断する重要なポイントです。
ただし、施設内で見学できるところが限られているというケースは、事業者が施設の情報開示にあまり積極的ではない兆候といえる一方で、すでに入居している人のプライバシーを大切にしているとも判断できます。このように見学や体験入居においては、そこで見たことや感じたことを早合点して判断するのではなく、じっくりと検討して「そこが自分に合うか」を判断することが大切です。
目に見えないサービスの質の違いも比較する
施設見学や体験入居では、居室や設備など目に見える部分だけでなく、目に見えないサービスの質の違いを、しっかりと確認するよう心がけましょう。たとえば介護付き有料老人ホームでは、要介護者と介護に関わる職員の割合は3:1(3人にひとり)以上と定められています。そうすると、職員体制が2:1(2人にひとり)の施設は、より手厚い介護を提供していることになります。看護師の配置も、介護付き有料老人ホームは日勤配置が義務付けられていますが、24時間看護師が常駐している施設であれば、医療的処置や看護の体制がより充実しているといえます。
その他にも、食事内容やアクティビティの違い、リハビリや認知症対応、職員の動きや入居者への対応など、あらゆる点に五感を研ぎ澄まして、その施設が自分に合うのかを見極めなければなりません。
見学までの手順と心構え
1. 見学日時の候補を出す
施設側の都合もあるので、複数の候補日時を決めておく
2. 予約する
急な訪問では十分な説明が聞けないので、必ず予約を。
また、ひとりではなく、2 ~ 3 人で行くと、多彩な視点から見ることができる
3. 見学でのチェックポイントを確認
自分たちが確認したいこと、見ておきたいをまとめて、事前にチェックリストを用意しておくと便利
4. 持ち物の準備
筆記用具、見学チェックリストや確認事項をまとめたメモ、カメラ、メジャー(家具を持ち込むスペースの確認)などを準備
■見学予約時に施設側に伝えておく項目
「生活」「介護」「医療」の3つをチェック
施設見学や体験入居では、住まいとなる居室そのものの内容に加えて、「生活」「介護」「医療」の3つについて、その内容をチェックすると良いでしょう。以下は介護型の有料老人ホームを主に想定したチェック内容ですが、その他の高齢者向け施設にも、同様に当てはまるものも多いので、参考にしてください。
生活については、「普通の生活を送れるか?」という点を念頭に、食事やアクティビティ、生活の自由度、そこに和める場所や空間があるのかを確認しましょう。
安全で快適な設備かチェック
設備のチェックポイントは、安全で快適な設備なのかが最も重要であり、「入居者の安全や快適な暮らしへの配慮があるか?」という観点で確認をします。たとえばエレベーターについて、台数や大きさも含めて、食事などの際にスムーズな移動が可能なのかもチェックします。共用設備では、談話スペースなど自室以外に和める場所があるか、交流の場所が整備されているのかも重要です。居室については、出入り口の扉の形や大きさ、エアコンの設置位置などにも注意したいところです。
介護や認知症への対応力は?
介護については、「要介護度が重くなった場合や認知症への対応力」を見極めることが大切です。その上で、昼間や夜の職員配置、緊急時の対応、どのようなケアがどこまで可能なのかも聞いておきます。介護スタッフについては、特にリーダークラスの職員に経験豊富な人がいるのかがポイントです。また、認知症ケアに自信を持っているか、ターミナルケアの経験があるかについても確認しておきましょう。加えて職員の言葉遣いの丁寧さや笑顔でのあいさつ、親身な態度や介護への熱意についても、よく観察してください。介護設備については、浴室の種類や数、入浴回数や入浴介助のやり方、さらに外部の介護サービスの利用可否などについても聞いておくと良いでしょう。
高齢者の住まい・施設のチェックポイント
■生活について
チェックするポイント「普通の生活が送れるか?」
●環境
1.共用スペースに和める場所がある
2.居室や共用スペースが明るい
3.テラス、庭など季節を感じられる場所がある
●食事
1.食事場所の広さが十分で、雰囲気が良いか
2.食事の提供はどのような形式か(厨房での調理、配食など)
3.食事の時間は適切か
4.味付けやアレルギー、介護食などについての配慮や対応は十分か
●レクリエーションなど
1.内容が魅力的か
2.実施頻度や回数は十分か
3.自立やリハビリにつながる内容のものか
4.外部との交流や外出の機会につながっているか
●その他
1.タバコや酒など、嗜好品に関する対応
2.家族との面会や外出は十分にできるか
■設備について
チェックするポイント「入居者の安全や快適な暮らしへの配慮があるか?」
●居室
1.窓の向きや日差しはどうか
2.温度や湿度は保たれているか
3.室内の防音は保たれているか
4.手すりの設置位置や高さ
5.出入り口は十分な広さか
6.ナースコールなどは適切な位置(手の届く場所)にあるか
7.エアコンの位置は適切か
●その他
☑ 共用の浴室・トイレ等、水回りは清潔感があるか
☑ 廊下やエレベーターホールに腰かけられる場所があるか
☑ エレベーターは十分な広さ・台数があるか
☑ 廊下は十分な広さがあるか
☑ 非常口までの移動はスムーズか
■介護について
チェックするポイント「要介護度が重くなった場合や認知症への対応力」
●体制
1.日中と夜間の職員数は十分か
2.夜間の介護体制はどのようなものか
3.緊急時の対応はしっかりとしているか
4.どのような症状まで介護(ケア)をしてくれるのか
5.医療的ケアやターミナルケアへの対応は可能か
●設備
1.重度対応の入浴設備があるか
2.玄関やフロアのセキュリティは十分か
●職員の質
1.笑顔や丁寧な言葉遣いをしているか
2.介護への熱意が感じられるか
3.経験豊かな職員が多いか
出典:岡本弘子『高齢者施設の費用・選び方・手続きのすべて』ナツメ社
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